2005-05-06

_ 星のダンスを見においで(完全版)

お気に入りの作品の一つである「星のダンスを見においで」が完全版となって再発売された。もとはソノラマ文庫から文庫2冊で発売されていたものが、完全版では新書1冊となっている。ただ440ページもある厚い本となっていて、かなり読みづらい。笹本祐一氏の作品は過去に妖精作戦やRIOが多少修正されて再発売されているが、今回は内容にもかなり手が加えられている(あとがきでは2割増加と書かれている)。

手が加えられているのは主にオリジナル版の2冊目の中盤以降のストーリーで、今まで全く無かったシーンがいくつか追加されている。オリジナル版では2冊目のストーリーがかなりハイテンポで進み、1冊目との進行速度の差を感じることがあったが、そのあたりを鑑みた追記となっているようだ。ただ、尻切れトンボのように感じていた最後のシーンはあまり追加されていないのがちょっと残念か。

この作品はすでに何度も読んでいて、ほぼ全ての文章を覚えている。よって今回変更/追記された部分もほぼ正確に判別できるわけだが、微妙に追加/変更された部分は違和感なく読めるのに、新しく追加されているシーンにはかなり違和感を感じる。特に新しく追加されたシーンからオリジナルにもあるシーンに戻ったときに大きな違和感を感じる。具体的にどのようにと言うのは難しいが、追加されたシーンでは主人公の唯佳の成長にスポットが当てられている感じがするのに、オリジナルにあるシーンに戻ってくるとそれが元に戻っているという感じか。もっと全体的に書き直しを行えば違和感は減っていたかもしれないが、そうすると1冊にまとまらなかっただろうと思う。

オリジナルは92〜93年に発売されたもので、すでに10年以上経っていることになる。笹本氏はあまり文体が変わらない人なので文章に問題はないが、さすがに10年以上前の作品に追記するのは無理があったというところか。

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